2023年HOSTにてマールクーニックから発表されたEK43の兄弟機、「EK OMNIA」。今のタイミングでは日本語名でなんと呼ぶか決定していないため、“オムニア”と記載していきます。
“OMINIA”とはラテン語で全てという意味らしくすべてのカフェに使用してほしいという思いが込められた名前だと思います。
これから紹介していきますが、EK43とは別の設計理念の元で設計されたと思われます。よりカフェでの使用を意識した仕様になっています。多くのカフェにて活用が今から期待されます。
情報源
この記事をまとめる上で参考にしたサイトです。マールクーニックの情報はブランディング寄りすぎてあまり仕様がわかりませんでしたので、HOST2023に参加していたYouTuderが主な情報源になります。
マールクーニック公式(まず初めにこちらを見ていただくことを推奨します)
この動画のコメントにて質問を受け付けており、マールクーニックの担当者が回答しています。
Lance Hedrick(アメリカ)
Benjamin Hohlmann(ドイツ)
EKオムニア 概要
マールクーニックのサイトの説明を引用します。オムニアにはEK43にはない、いろんな機能が付与されています。
より速く、よりスマートに、より正確に。マールコーニッヒの新しいエスプレッソ&フィルターコーヒー用グラインダーのフラッグシップモデルが、新たな業界基準を打ち立てました。EKオムニアは、マールケーニッヒの絶え間ない卓越性の追求の縮図であり、コーヒーグラインダーの革新における新たな飛躍です。
アイコニックなEK43の遺産を基に開発されたEKオムニアは、アイコニックなEKに最新の画期的なテクノロジーを加え、かつてない安定性と効率性を追求したマールケーニッヒの新しいフラッグシップグラインダーです。EKオムニアは、EK43、EK43 S、EKオムニアの3機種で構成されるマールケーニッヒのEKシリーズに加わった、注目すべき製品です。
EKオムニアは、優れた挽き心地を求めながらも、より迅速なワークフローと利便性を求めるコーヒー愛好家にとって、コーヒー挽きにおける新時代の扉を開きます。
https://www.mahlkoenig.com/products/ek-omnia
3つの研磨モード
- クラシックモード: 同じルーチンを維持し、クラシックにとどまる
- タイムモード: エスプレッソに理想的な時間ベースの挽き方
- ライブラリーモード: レシピを最大10個まで保存でき、挽き具合が自動的に調整され、定量ホッパーユニットが適量の豆を投入します。
手動と自動を組み合わせた挽き目調整により、微細で超精密な微調整が可能
手動、自動、タッチ式挽き目調整(GSA)オプションを組み合わせた、個性的で革新的な無段階挽き目調整アプローチにより、あらゆるバリスタの好みに対応し、超精密な微調整が可能です。
- クラシックGSA:メインノブでバリの間隔を設定します。
- タッチGSA:タッチ機能を使ってバリの間隔を設定します。
- オートGSA: ライブラリモードで保存したバリの距離を自動調整
画期的な2つのアクセサリー
- プレドージングユニット(PDU)=定量投入ホッパー
- 調節可能なポータフィルターホルダー(取り外し可能なフロントカバーで切り替え可能) – マグネット式でポータフィルターをホールドでき、さらに便利なように前面に取り付けられています
超高効率ブラシレスDCモーター
ほぼ無音、無熱粉砕、高いエネルギー効率、振動の低減、コーヒーの飛散の低減を実現。
ドイツ製98mm鋳鋼製グライド刃-愛されている象徴的なEK43と同じ形状
タッチスクリーン付きHMIディスプレイ
バッグホルダーとスポットライトを内蔵した、簡単に取り外し可能なシュート
熱を逃がす冷却リブを備えた特別なバックカバーデザイン
電源ステータスを示すLED照明付きスタート/ストップボタン
マグネット式ドリップトレイ
https://www.mahlkoenig.com/products/ek-omnia
動画を見ていただければ、昨日の概要はわかると思います。
私が思いにオムニアの特徴は、EK43の風合いやミル刃を継承しつつ、よりカフェでの使用に特化した形に進化したことだと思います。オムニアはEK43の後継機種ではありません。EK43は1日に数十キロ程度挽くような向上に特化した形になり、オムニアは小売りやカフェでの使用に棲み分けしていくことになると考えられます。次にEK43との機能比較の表を示します。
EK43との比較(HOST2023時点)
HOST2023時点で公表されているスペックを既存のEK43と比較しました。本体サイズは基本同じで、ミル刃も基本的に一緒のようですが、大きな違いが数点あります。
EK43 | EK OMINA*1 | |
本体サイズ(㎜)*2 | W230×D410 | W230×D410 |
デフォルトホッパー容量(g) | 1,500 | 250 |
本体重量(kg) | 26 | 24 |
ミル刃径(㎜) | 98 | 98 |
定格電流(w;100V) | 1,300 | 750*3 |
モーター電源 | AC(交流) | DC(直流) |
静音性 | × | 〇 |
マニュアルでの挽き目設定 (クラシックモード) | 〇 アナログ | 〇 デジタル |
プレドーシングユニット(PDU) | × | 〇 |
挽き時間による挽き目設定 (タイムモード、ライブラリモード) | × | 〇 |
自動0点調整機能 | × | 〇 |
アライメントツール | 必要 | 不要 |
マグネット豆受け | × | 〇 |
ホルターフィルター受け | × | 〇 |
*2 高さはデフォルトのホッパーのサイズが違うため、高さの値は削除
*3 HP上の公表値だが電圧は不明
EK43との違い1:DCモーター → 安定したトルクを実現
オムニアとEK43の最も大きな違いは、モーターだと思います。従来のモーターはACモーター、交流モーターだったのですが、オムニアではDCモーター、直流モーターになっています。
難しい工学的なことはおいて、この変更による日本のユーザーのメリットとしては以下の点が挙げられます。
- 高い静音性(オムニアのモーターの方が静か)
- トルクの安定性(オムニアのモーターの方が初期トルクがあり、一定のトルクがある)
- 周波数による回転数の違いが発生しない
特に日本は50/60Hz両方あるという特殊な場所ですので、それが関係なく使用できるのか、販売側からしてもメリットがありますね。
静音性について、いろんな動画でも静かと言われていますが、実際には豆を挽くのでそんな静かにはならないのではないかというのが私案です。実際にDCモーターで動いている家庭用のミルやフルオートコーヒーマシンでもコーヒーを挽く瞬間は静かではないですよね。
一方、モーター変更に伴う最も気になる点は、EK43と同じような粒度分布のコーヒーを挽くことができるのかです。おそらく、同じ挽き目にはならないと思います。その理由は、トルクが違うためです。
今回の変更でE65SやE80Sにて採用されているミル刃の間の距離が表示されるようになりました。この数値が粒度分布上のピークの数値のように錯覚しそうになりますが、あくまでもミル刃の距離しか表示されません。
EK43のユニークな粒度分布は、ミル刃とモーターの相性の結果、稀有な事象として君臨していたためこれまでコーヒー業界でブレイクしていたのです。モーターが変われば間違いなく粒度分布は変わってしまいます。今回のHOST2023でもコーヒー豆を挽いていないことからも、そこら辺の調整がまだうまくいっていないのだと、察します。
ただ、カフェ用途としてはこれまでのEK43よりも格段に使いやすくなったと思います。ぜひ実機で確認してみたいのがプレドーシングユニットです。ホッパーの下にギアがついており、ホッパー内にコーヒーを満載させた状態でもいっぱいずつコーヒーを挽くことができる機能だと思います。実際に使用しなければどのくらいの精度で再現できるかわかりませんが、これまでのショップグラインダーにはなかった機能なので気になります。
EK43との違い2:フロント側についたギア→メンテンナス性向上
モーターと大きな違いは、内部構造の変更です。以下の写真は上の動画からの切り抜きです。
見ていただくとわかりますが、表のダイヤル裏にギアがついています。これによって何がよかったかというと、これまで故障の原因もなっていたシェアプレートなしで稼働させることができること、さらに中心軸の調整のために古い機種ではアライメントツールが必要だったと思いますが、それなしで調整できるようになりました。しかも0点調整もオートでできるようになっているようです。
これまで悩まされていた風切り音が鳴らなくなり、掃除もしやすく、結果故障しずらい設計になっています。この変更は大きいと思います。
ただモーターの変更になりそれに伴い基盤も追加され、前面のダイアル操作もモーターで行っていることを考えると故障しずらいかどうかは使ってみないとわからないというところでしょうか(笑)
とにもかくにも実際にコーヒーを挽いてみたというレビューが待たれるところです。
最後に、まとめ
HOST2023にて初発表されたEK OMNIA、オムニアですが、これまでEK43にて指摘されていた問題点を改良し、カフェ用として特化したEKシリーズがついに誕生したという感じです。これまで苦労していた静電気除去の棒が簡単に取り外しできるようになり、スイッチも押しやすくなり、エスプレッソ用のポルターフィルターも取り付け可能になります。
早く日本でも実機を使ってみたいですね!