コーヒーの豆から一杯のコーヒーになるまで。意外に知らないコーヒーの味への影響とその選び方

苦くて黒い飲み物は?と聞かれたらほとんどの人が「コーヒー」と答えるでしょう。
では赤道付近で数多く生産されている飲み物は?と聞かれたらどれくらいの人が「コーヒー」と答えるでしょうか。今現在、とても身近な飲み物のコーヒーですが、それがどのように作られて、どのように味を楽しめばよいのかを知っている人は意外と少ないのかもしれません。
そんな方々のために、コーヒーをもっと楽しめるようにコーヒーが出来上がるまでと、それに伴う味の変化についてご紹介します。

コーヒー豆ができるまで

私たちがコーヒーと呼ぶ飲み物は、簡単に言うとコーヒーの木になる果実の種を加工し、その成分を水に溶かしたものであるということはご存知でしょうか。

コーヒー豆が出来るまでには多くの手が加わっているのです。

私たちが普段目にするコーヒー豆ができるまでには主に次の4つの工程を経ています。

 

栽培

種子をまき発芽させ数か月から一年ほどで苗木ができます。

その後、苗木を成木にまで育て上げ、長い年月をかけ果実を生産します。

その期間、病害虫への対策、日照の調整、土壌の管理など作物の維持が継続的に行われます。
というのも、栽培といのはその後のコーヒーがどのような味になるかを左右する重要な工程なのです。

収穫

木の枝の節の部分に点在しているコーヒーの果実を木から分離しまとめていく作業です。

果実1粒1粒を手作業で収穫する手摘み。決して効率的な方法ではありませんが、熟度の同じ実のみを収穫することが可能なため、豆の品質を均一のすることが可能です。

それに対して、機械収穫があります。木の枝をゆするブラシのようなものを使用し実を枝から落とします。収穫できる実の均一性は手摘みには劣るものの、効率性には長けています。

精選

収穫されたコーヒーの実を普段私たちが目にするコーヒー豆の形にするまでの工程を精選と呼びます。

精選では、種子を覆う被覆物と水分の除去を段階的に取り除きます。

精選にはいくつかの方法があり、それぞれの方法によって最終的なコーヒーの味に大きく影響してきます。

詳しくは後ほどご説明します。

選別

コーヒー豆はすべてが同じ形、同じ重さをしているわけではありません。

精選されたコーヒー豆は、いくつかの観点から分けられます

それを選別といいます。

どのような観点から選別されるかは後ほど詳しくご説明します。
 

どこでコーヒーは生産されているの?

コーヒーは世界中でどこでも作ることができるわけではないのです。

コーヒーの木は寒さに弱いため熱帯から亜熱帯に位置する国でしか作ることができません。
「コーヒーベルト」という言葉を耳にしたことはないでしょうか。コーヒーの木を栽培することができる赤道を中心に北緯25度、南緯25度に広がる帯状の地域のことを示します。

また、コーヒー栽培には

年間降水量が1500~2000㎜
成長期に雨が多く、収穫期に乾燥している
雨季と乾季があること
年間平均気温が20度

という条件が必要です。

これらの条件を満たした国々でコーヒーは栽培されています。

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高地でしか収穫できない?

これらの条件を満たしたうえでもう一つ重要な条件があります。

それが標高です。

コーヒーを選ぶときにキリマンジャロやエメラルドマウンテンなど山の名前を目にすることが多いのもそのためです。
また、標高が高ければ高いほど高品質のコーヒー豆が栽培できると言われています。理由は、高地ほど昼夜の寒暖差が大きくなりコーヒーの果実がゆっくりと熟されるからです。
山や高地で栽培することで熱帯、亜熱帯でありながらも、寒暖差を生み出しているというわけです。

コーヒー豆が入っている袋に標高が表記されている場合があるのでコーヒー豆を購入する際はぜひ生産地の標高を気にしてみてください。

年一回の収穫

コーヒーの実は一年に一回収穫されます。

乾季を越え雨季になるとコーヒーの花が咲きます。その約8か月後に実がなるのです。
つまり収穫時期は乾季、日本で言うと秋冬にあたります。
乾季と雨季の時期によってコーヒーの実がなる時期が変わってくるので、世界中同じタイミングで収穫されるわけではありません。

例えば
10月~3月頃 エチオピア、ベトナム、中米 etc
4月~9月頃 ブラジル、ペルー etc

注意していただきたいのが赤道をまたぐ国では南半球と北半球に位置することになるので1つの国でも年に2回収穫する国もあるということです。
インドネシア、ケニア、コロンビアなどが該当します。
※1本のコーヒーの木からは年1回の収穫
 

10月1日は ”コーヒーの日”

10月1日

”コーヒーの日”が存在しているのはご存じだったでしょうか?

コーヒーの需要と供給のバランスを均衡にすること、コーヒー豆の価格を安定させることを目的とした国際商品協定を意味する国際協定内で制定されました。

この日にちは、コーヒー生産状況に関係しています。

コーヒーの生産量世界第1位がブラジルですが、ブラジルではコーヒーの収穫が9月に終わります。
コーヒーの動向に大きく関係してくるブラジルの収穫時期に合わせたというわけです。

また10月1日、”コーヒーの日”を境にコーヒー界では新年を迎え、それ以降に収穫されたコーヒー豆を”ニュークロップ”と呼び、それ以前のものを”オールドクロップ”と呼ぶようになります。

10月1日、”コーヒーの日”にキャンペーンなどを行うカフェなども多いので年に1度のコーヒーのための日に、ブラっと立ち寄ってみてはいかがでしょうか。

コーヒーの木についての記事はこちらから

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コーヒー豆の精選

液体としてのコーヒーと、豆としてのコーヒーを見たことある人は数多くいますが、意外と知られていない事実として、コーヒー豆はもともと木の実であるということです。

普段私達が食べる果物と同じように果実がありその中にコーヒー豆が入っているのです。

つまり私たちが目にする茶色いコーヒー豆になるには周りの果実や皮を取り除かなければならないのです。

不要なものを取り除き、焙煎する前の生豆までにする工程「精選」と呼びます。

ここでは主流な精選方法3つをご紹介します。

精選の工程の中において乾燥をさせるタイミングが大きく違ってくるのがポイントです。

コーヒー豆の構造

コーヒ-豆がどのような構造になっているかを知ることで、精選方法がより分かりやすくなるので簡単にご紹介します。

1番外側から

パルプ・・一番外側の外果皮、その内側の果肉を合わせた呼び方
ムシラージ・・ぬるぬるした粘性のある果肉層
パーチメント・・薄い固いから

となっています。

これを頭に入れたうえで次の精選方法を見てみてください。

 

ナチュラル(非水洗式)精選方法

水を使わない精選方法で、収穫した果実を丸ごと天日干しし、完全に乾燥させます。からからに干からびるとパルプ、ムシラージ、パーチメントがくっついて厚い殻(ハスク)になり、それを割ると中から生豆だけが出てきます。

コーヒー利用の初期から行われていた歴史的にも最も古い方法で、水の便が悪いブラジル南部やイエメンなどでは今でも主流な精選法です。

ブラジル、エチオピアが主に採用しています。

水を過度に使わないので環境に良い
果肉が熟成するので独特の甘みがでる

 

ウォッシュド(水洗式)精選方法

名前にある通り、水を使い精選する方法です。
1800年代後半のコーヒーブームによりコーヒー需要が急増し生産性向上が必要になりました。大量に収穫したコーヒーの果実が傷む前に素早く保存がきくまでに精選できるかが求められたのです。コーヒーは湿潤な気候の国で作られるため以前までのナチュラル精選方法だと、日数がかかるため腐ってしまうためにこのウォッシュド精選法が発明されました。

まず初めにパルパーという機械で果実と果肉を剥きとり洗います。
ムシラージが付着した豆ができ上るので、大きな水槽に一晩漬け、微生物による発行によりムシラージを分散させます。
その後パーチメントに覆われた段階で乾燥させます
次にパーチメントを脱穀すれば生豆の完成です。

ケニア、コロンビア、グアテマラ、などが主な採用国です。

精選時間が短縮できる
クリーンな味わい

 

 

パルプドナチュラル精選方法

ムシラージの全部、もしくは一部を残してパーチメントコーヒーを乾燥させる方法です。

果肉を除去するがムシラージは残したままにするというウォッシュド精選とナチュラル精選の中間のイメージです。

両方の利点を良いとこどりした精選方法です。

コスタリカ、パナマで多く採用されています。

独特な甘みのある味わい
ムシラージを除去しないので時間短縮
水を大量に必要としない

 

精選方法の違いによる味わいの違い

カフェでコーヒーを頼むときに一番に気にするのが「味」だと思いますが、その「味」がどのような要因で決定されるのか考えたことはあるでしょか。

大きく関係してくるのが精選方法です。

ここでは精選方法によってコーヒーの「味」にどのような変化があるのかをご紹介します。

精選方法によって味が違う

ウォッシュド精選方法とナチュラル精選方法の味の違いを見てみましょう。

ウォッシュド・・クリーンですっきりした味わい
ナチュラル・・舌を包み込むような味わい

ざっというとこんな感じです。

この2つの精選の違いは果肉をすぐに取るかそうでないかと説明しましたが、まさにこの違いが「味」に関係してくるのです。

ウォッシュドでは果肉が熟す前に除去するため、果肉の味が豆に移ることはないのですっきりした味わいになります。

一方、ナチュラルは収穫後すぐに果肉をとらずに果肉の甘みや酸味が豆に移るため、舌を包み込むような味わいになるのです。

 

ブラジルとエチオピアはナチュラルが多い

カフェでコーヒー豆を購入する際に生産国と精選方法を見てみてください。
ブラジルとエチオピアの豆はナチュラル精選されているものが多くみられます。

それは国の状況が関係してきます。

ウォッシュド精選するには大量の水と施設が必要になります。
つまりそれなりにお金がないとウォッシュド精選はできないということです。

ブラジルとエチオピアのコーヒー農園は施設などにお金をかけられないというのが現実です。

しかしここ最近では、ブラジルやエチオピアからもウォッシュド精選されたコーヒー豆が生産されはじめ、品評会でも賞をとる農園も出てきています。

同じ国のウォッシュド精選とナチュラル精選されたコーヒーを飲み比べてみてはいかがでしょうか。

コーヒー豆の選別

コーヒー豆は収穫したものすべてが店頭に並ぶわけではありません。

コーヒー豆は農園、焙煎所、喫茶店やカフェにて選別されます。これをソーティングとも呼びます。

選別は以下の2点のために行われます。

・等級の格付け

国によって豆の等級というものがありますが、豆の大きさによって等級が決まります。

・欠点豆を取り除く

リンゴ農園やブドウ農園で省きが出るように、コーヒー豆にも店頭に出すことができないコーヒー豆があります。

それを欠点豆とよびます。

欠点豆として除去される豆には、

カビがはえた豆
成長不足により異形になっている豆
虫に食われた豆

などがあります。

これらの豆は見た目だけでなく味にも大きく関係してきます。

カビが生えた豆から抽出されたコーヒーを飲みたくないのは当たり前ですね。
異形の豆や虫に食われた豆は、焙煎の際に通常の豆よりも過度に熱されるため、焦げたりすることでコーヒーの味がくすんだものになってしまいます。
クリーンなコーヒーが好まれる現在は喜ばれるものではありません。

選別には主に3つの方法があるのでご紹介します・

大きさによる選別

1つ目が、コーヒー豆の大きさの統一のための選別です。

目の大きさの異なるふるいを同時に使い豆のサイズによって分けていきます。

豆の大きさを揃えることで焙煎をする際に均一に火を通せることにより、味のばらつきをなくすと共に一部の豆の過度な焙煎を防ぐことにつながります。

 

密度による選別

比重選別とも呼ばれます。

主にはカタドールという機械を使用し、落下する豆に対し下から気流を当てることで重いものはそのまま落下し、軽いものは吹き飛ばされ別の空間へ行きます。

ここで注意したいのが、密度が同じであってもサイズが違うと風に対する動きが変わってくるため密度選別をする前の大きさやサイズによる選別が重要になってくるということです。

一般的には密度の大きなものほど品質が良いとされます。

色差選別

生豆の色によって選別する方法です。

選別にはカラーソーターという機械を使用します。

生豆に強い光を当てることで不良品と判定された生豆に圧縮空気を吹き付け、別のラインへ飛ばします。

カラーソーターの技術は年々進歩しており、虫食い豆や微妙な色や形の違いを検出し除去することも可能になってきたため、生豆だけでなく焙煎後の豆の選別に使用されるようにもなりました。

焙煎

皆さんが良く目にする茶色いコーヒー豆は、生のコーヒー豆に火を通したものです。

この過程を焙煎と呼びます。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。
 

コーヒーの味の決め手!「焙煎」と「産地」について

コーヒーを楽しむ上で知っていて損はない「焙煎」と「産地」による味の違いについてご紹介します。

粉砕、抽出

コーヒーを飲む前の最後の段階です。

焙煎された豆を砕く粉砕とコーヒー豆の成分を水に溶かしだす抽出です。

詳しくはこちらの記事をご覧ください。

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いかがだたでしょうか。

私たちがコーヒーを口にするまでには、たくさんの時間と労力がかかっています。

ただの一杯。されど一杯。ですね。

コーヒーについて知ることで、一杯飲む楽しみが何倍にもなるでしょう。

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